アートメイクの資格制度とは|施術者デビューへのステップを解説

近年、美容意識の高まりとともに注目を集めているアートメイク。
「メイク」という言葉の響きから、美容師やエステティシャンが行う美容サービスの一種だとイメージされることも少なくありませんが、 実際は医療行為に該当します。
そのためアートメイクアーティストとして施術を行うには、法律で定められた医療従事者としての資格が必要です。
このページではアートメイク施術に必要な資格制度の仕組みや、 違法とされるケース、施術者になるまでの具体的なステップについて解説していきます。
アートメイクを行うには資格が必要?
施術可否 | 条件 | |
---|---|---|
医師 | ◯ | 単独で施術可能 |
看護師 | ◯ | 医師の指示下であれば施術可能 |
准看護師 | △ | 医療機関の判断によって異なる |
歯科医師 | △ | リップ(唇/口周り)のアートメイクのみ単独で施術可能 |
歯科衛生士 | △ | リップ(唇/口周り)のアートメイクのみ歯科医師の指示下であれば施術可能 |
美容師/無資格者 | × | 完全に違法。施術はできない |
海外の民間資格のみ | × | 日本国内では資格と認められず施術不可 |
日本ではアートメイクは医療行為に該当するため、施術できるのは医師や看護師などの医療従事者に限られています。
持っている資格の種類によって施術部位に制限があるため、保有する資格とその条件をしっかり確認しておくことが大切です。
無資格の人の施術は違法?
日本では無資格者によるアートメイクの施術は医師法違反にあたり、処罰の対象となります。
実際に、無資格で施術を行っていた人物が逮捕されたケースも報告されています。
札幌市の皮膚科クリニックにおける事例(2015年9月)
札幌市の「つつい皮膚科クリニック」において、医師免許を持たないエステ店の元従業員が、無資格でアートメイクの施術を行っていました。これにより、同クリニックの院長と看護師の妻、エステ店の元従業員とその夫の計4人が医師法違反の疑いで逮捕されました。
なお、2020年にタトゥー施術は医療行為にあたらないとする最高裁判決が出ましたが、アートメイクは医療行為に分類されているのでタトゥーとは異なります。
そのためタトゥーの技術や経験があっても、アートメイクを施術することは法律上認められていません。
アートメイクとタトゥーの違い
アートメイクとタトゥーはどちらも皮膚に色素を入れる施術ですが、色素を入れる深さに大きな違いがあります。
皮膚のごく浅い層である表皮層(約0.2mm)に色素を入れる
タトゥー:
ターンオーバーの影響を受けない真皮層に色素を入れる
タトゥーは一度定着すると自然に消えることはありませんが、アートメイクはターンオーバーの影響で徐々に退色していくため、必要に応じて除去が可能です。
また使用する針の太さや施術環境、衛生管理の基準にも違いがあります。
タトゥーについてくわしく知りたい方は眉毛タトゥーとは|眉毛アートメイクとの選択肢を比較をご覧ください。
有資格者でも違法となるケース
アートメイク施術は、医師や看護師などの医療資格を持っていれば誰でも行えるわけではありません。
ここでは特に注意すべき2つのケースをご紹介します。
営業許可を満たしていない施設
医療法 第7条(開設届け):
病院および診療所の開設届。病院又は診療所を開設した者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事に届け出なければならない。医療法 第8条(開設許可):
病院および診療所の開設許可。病院又は診療所を開設しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
アートメイクを提供する場所は、医療法に基づく許可・届出を行った診療所であることが前提です。
そのため有資格者であっても、施設の設備が法令に適合していない場合は、施術が違法となるケースがあります。
医師が常駐していない施設でのアートメイク
保健師助産師看護師法 第37条
保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があった場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をし、その他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。
医療施設として営業許可を得ているクリニックであっても、施設内に医師がいない場合のアートメイク施術は違反となります。
アートメイクは医療行為に該当するため、看護師が施術を行う際は医師の明確な指示と管理があることが求められます。
アートメイク専門の資格はあるの?
現在、日本国内にはアートメイクに特化した国家資格は存在していません。
そのため医師や看護師などの医療資格を持っていることが、アートメイク施術者としての前提条件となります。
しかしアートメイクは医療資格だけでなく、美的センスや高度な技術も求められます。
独学でアーティストとしてデビューするのは非常に困難なので、技術を証明するために認定資格やアートメイクスクールの修了証を取るのが業界内ではスタンダードです。
協会の認定資格 | スクールの修了証 | |
---|---|---|
主催 | 民間団体・協会 | アートメイクスクール(多くは施術機関直営) |
主な内容 | 理論・知識重視(筆記+基礎技術) | 実技・現場対応重視(実習・実技試験) |
特徴 | 知識ベースの証明 | 技術習得の証明 |
呼称例 | JAA/IMAA/ROC認定 など | Certificate、Diploma、修了証 など |
アートメイク協会の認定資格
日本国内にはアートメイクに関する複数の協会や民間団体が存在しており、それぞれ独自の認定資格を発行しています。
これらの資格は、協会が実施する検定試験や講習を受講・修了することで取得可能です。
- JAA認定資格
- IMAA認定資格
- ROC国際ライセンス など
協会の認定資格では、皮膚の構造や色素学、衛生管理などの理論的知識が重視されることが多く、筆記試験や基礎的な実技評価を通して、アートメイクに必要な知識レベルを証明する形式です。
アートメイクスクールが発行する修了証
アートメイクの施術を行うには理論だけでなく、実践的なスキルの習得が必要不可欠です。
そのため、アートメイクを実際に提供しているクリニックのスクールで実技を学ぶケースが多くなっています。
こうしたスクールの修了証は「現場で技術を学んだ証明」として評価され、採用や信用面でプラスに働くことが期待できます。
- Certificate(サーティフィケート)
- IMAA認定資格
- Diploma(ディプロマ) など
※名称はスクールによって異なる
各国のアートメイク資格
アートメイクは日本だけでなく、世界中の美容や医療分野において幅広く普及しています。
しかし、施術に必要な資格や法的な位置づけは国によって大きく異なるのが現状です。
このセクションでは海外展開を考える施術者に向けて、各国でアートメイクを行うために必要な資格制度と、そのライセンスが日本国内でどのように扱われるのかについて解説します。
施術する国 | 医療資格 |
---|---|
日本 | 必要 |
韓国 | 必要 |
中国 | 不要 |
アメリカ | 不要(ライセンスは必要な場合も) |
韓国|医師免許が必要だが、無資格施術が横行
韓国では、アートメイクは医療行為としてみなされているため、医師免許を持つ者のみ施術可能です。
しかし実際には多くの無資格者がアートメイクを提供しており、違法施術が黙認されている状況もみられます。
さらに著名人や政治家が無資格者による施術を受けていたと報じられた事例もあり、これを受けて法制度の見直しを求める声が高まっています。
中国|現時点では資格不要
中国では、アートメイク施術に関する国家資格制度の導入が進められていると報告されています。
しかし現時点では、具体的な資格取得のプロセスや要件、施術者に求められる基準などは公開されていないようです。
そのため中国でアートメイクを施術する際は、現地の最新の法規制や資格要件を十分に確認し、遵守することが重要です。
アメリカ|州ごとに規定あり
アメリカでは、アートメイクは美容目的で行われるタトゥーの一種としてみなされているため、医療資格を持つ医師や看護師でなくても施術を行うことが可能です。
ただし、アートメイクの施術に関する規制や必要な資格は州や地域によって異なります。
例えばフロリダ州では州が承認した3時間の血液媒介病原体および感染症に関するコースの修了、バージニア州では「パーマネントコスメティックタトゥー」のライセンス取得などが必要です。
日本で海外資格を活用するには
日本でアートメイクの施術を行うには、日本で取得した医師免許や看護師免許などの医療資格が必要です。
そのため海外で取得したアートメイクの資格だけでは、国内で施術者として働くことはできません。
ただし海外のアートメイク資格を持っていることは、以下のような形で活かすことが可能です。
技術力の証明:
海外資格は、アートメイクに関する高度な技術や知識を持っている証となります。これにより、美容クリニックへの就職や顧客への信頼性向上に寄与します。
教育分野での活動:
海外での経験や資格を活かし、アートメイクスクールの講師やトレーナーとして活動する道もあります。ただしこの場合も、講師自身が日本の医療資格を保有していることが前提となります。
アートメイクアーティストになるための3ステップ
アートメイクを仕事にしたいと思っても、「どこから始めればいいの?」「何が必要なの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
日本ではアートメイクは医療行為にあたるため、正しい手順を踏んで資格と技術を身につける必要があります。
ここでは、アートメイクアーティストとして活躍するために必要な3つのステップをご紹介します。
- 医師や看護師の資格をとる
- アートメイクの技術を習得する
- 医療機関で実務経験を積む
医師や看護師の資格をとる
まずは、アートメイクの施術が法律上認められている医療従事者の資格を取得する必要があります。
もっとも一般的なのは、看護師または准看護師の資格を取得するルートです。
看護師は最短で3年、准看護師は2年で資格取得が可能です。
准看護師は都道府県知事が発行する免許で、看護師と比べて一部制限があります。
医師免許を取得すれば単独で施術を行うことができますが、取得には8年以上と長い学習期間が必要です。
アートメイクの技術を習得する
アートメイクは繊細で高度な技術を必要とするため、資格取得後すぐにアーティストとしてデビューするのは難しいのが現実です。
そのためアートメイク専門のスクールや講習を受講し、技術を基礎からしっかりと身につけることが一般的なステップとなります。
スクールでは、眉・アイライン・リップなどの各部位の施術方法だけでなく、衛生管理やカウンセリング対応といった、現場で必要とされる実践的なスキルを習得可能です。
通学の頻度やスクールの方針にもよりますが、2カ月〜半年ほどかけて技術を磨いていくケースが多くみられます。
医療機関で実務経験を積む
アートメイクは医療機関内でのみ施術が許可されているため、法的に認められたクリニックに所属し、実務経験を積むことが大切です。
ここで実際の症例に触れながら、技術・接遇・リスク対応力を磨いていきます。
最低でも半年〜1年程度経験を重ねることで、フリーランスや講師として活躍する道も開けてきます。
アートメイクスクールについて
アートメイクスクールは、アートメイクの技術を専門的に学べる、医療従事者向けの教育機関です。
アートメイクは医療行為にあたるため、一般的に医師・看護師・准看護師のいずれかの資格を持つ方のみが受講対象となります。
民間企業や個人が運営するスクールもありますが、より現場で通用する技術を身につけたい方は、医療機関と提携しているスクールを受講するのがおすすめです。
- 医師監修のカリキュラムで信頼性が高い
- 実際のクリニックでモデル施術を練習できる
- もしものトラブルや感染対策もしっかり学べる
- 受講者は医師や看護師なのでまわりのレベルも高い
- 修了後に提携クリニックで勤務できるチャンスがある
メディカルブローアカデミー
メディカルブローアカデミーは、医療機関提携のアートメイクスクールとして、技術習得からキャリア形成まで一貫したサポート体制を整えています。
年間症例数6万件以上を誇る当院では、現場で活躍するトップアーティストが講師を務めており、実際の症例に基づいた最新の技術と知識を直接学ぶことができます。
また受講生それぞれのレベルや目的に合わせて、プレスクールからプロフェッショナルコースまで、段階的なスキルアッププログラムと独自の認定制度を用意しているのも大きな特徴です。
卒業後のサポートも充実
アカデミー卒業後はメディカルブローへの採用面接の機会があるため、直接雇用で活躍の場を広げることが可能です。
受講コースによっては、業務委託契約という柔軟な働き方を選択できる制度も整っており、自分らしいキャリアを築くことができます。
メディカルブローアカデミーにご興味のある方は、アートメイクスクールについてもぜひご覧ください。
まとめ
アートメイクの資格制度についてここまでの内容を振り返ると、次のポイントが大切です。
- アートメイクは医師や看護師などの医療従事者のみ施術可能
- アートメイク専門の資格はない
- 医療資格の取得後はスクールで技術を習得する
- スクールは直接雇用のチャンスがある医療機関提携型がおすすめ
アートメイクアーティストとして活躍するには、まずは医療従事者としての資格取得が必要不可欠です。
その後専門スクールなどで技術を学び、実務経験を積むことで、現場でのデビューが実現します。
アートメイクは「美容」だけでなく、「医療」の視点も求められる高度な専門技術です。
施術経験が豊かな講師陣による直接指導で、正確な知識と実践的な技術を学びたい方は、ぜひ当院のメディカルブローアカデミーもご検討ください。
よくある質問
アートメイクアーティストになるまでの期間は?
アートメイクアーティストになるには、最短でも2年半〜3年程度(准看護師の場合)はかかると考えておくのが現実的です。
看護師から施術者を目指す場合は、看護師免許をとるのに3年以上、専門スクールでの技術習得に半年程度の期間が必要とされています。
医療資格を取る前にスクールを受講できますか?
基本的に日本国内で正規に運営されているアートメイクスクールでは、医療資格(医師・看護師・准看護師)を取得していない方の受講はできません。
スクールのカリキュラムには実技やモデル施術など「医療従事者にしか行えない行為」が含まれることが多く、本人もスクール側も医師法違反に問われる可能があるためです。
アートメイクスクール選びの注意点は?
一部の民間講座では、医療資格を持たない講師が指導しているケースもあるので注意が必要です。
こうした講座では、医療現場で通用する技術や衛生管理が十分に学べない可能性があり、就職や転職にも不利になることがあります。
スクールを選ぶ際は、講師の経歴やカリキュラムを事前に確認し、信頼できる運営体制かどうかをしっかり確かめることが大切です。