ニップルアートメイクとは|黒ずみはよくなる?解決できる悩みや注意点を解説

ニップルアートメイクは乳輪や乳頭に色素を彫り入れることで、黒ずみや傷跡などのコンプレックスを解消する医療施術です。
医療補助の目的から美容目的まで、バストトップのデリケートな悩みを解決できる数少ない手段として注目を集めています。
この記事ではニップルアートメイクの特徴や施術の対象者、解決できる悩み、施術の注意点などを詳しく解説していきます。
目次
ニップルアートメイクとは
ニップルアートメイクとは、乳輪や乳頭の皮膚に専用インクで色素を彫り入れることで、バストトップの傷跡や黒ずみを目立たなくする医療施術です。
アートメイクの一種ですが、美容を目的とした一般的な眉毛アートメイクなどの施術とは異なる特徴を持っています。
【ニップルアートメイク特徴】
- 乳がんの患者に対して行う医療補助(パラメディカル)の側面が強い
- 施術には特殊なスキルが必要で施術を受けられる施設が限られる
この章ではニップルアートメイクの2つの特徴について、詳しく解説します。
アートメイクについて詳しく知りたい方はアートメイクとは?施術を受けられる部位や注意点まとめをご覧ください。
パラメディカルアートメイクの一種
医療補助の役割を持つアートメイクを総称して「パラメディカルアートメイク」と呼びます。
パラメディカルアートメイクは病気や手術で色素を失った皮膚を健康的に見せることを目的としており、ニップルアートメイクもこれに該当します。
【パラメディカルアートメイクに該当するもの】
- 乳房再建術後に行うニップルアートメイク
- 白斑症や傷跡に対するスキンアートメイク
- 脱毛症や無毛症に対する眉や頭皮へのアートメイク
- 口唇裂に対するリップアートメイク
など
ニップルアートメイクは乳房再建手術後の仕上げとして主治医から提案されるなど、パラメディカルアートメイクの中でも、特に一般医療と深い関わりがあるのが特徴です。
施術方法|ゼロから作るデザイン技術
ニップルアートメイクも眉やリップのアートメイク同様、皮膚の浅い層にインクを彫り入れて色を定着させる技術を用いて行います。
アートメイクで作る乳輪は本物のように見え、手術よりも身体への負担が少ない利点から、新たな乳輪再建方法として注目されています。
【ニップルアートメイクに必要な知識・技術】
- 健康な乳輪に合わせて色を調合する色彩学の知識
- ゼロからサイズと位置を決め、立体的に見せるデザイン力
パラメディカルのニップルアートメイクには専門的なスキルが必要なため、対応できる人材は限られています。
そのため、施術を提供しているクリニックを探すのに苦労することも少なくありません。
乳房手術の担当医とニップルアートメイクの提供施設に繋がりがあるケースも多いため、自身で探すのが難しい場合は相談してみると良いでしょう。
ニップルアートメイクの対象者|2つの目的
ニップルアートメイクは、先述した通り医療補助目的で行うことが大半でした。
しかし近年では美容目的の方に施術を提供する施設も増えており、あらゆるバストトップの悩みを解消できる施術へと変化しています。
ここからは具体的に施術の対象となる方を、医療補助と美容の2つの目的にわけて紹介していきます。
乳房の手術を受けた人|医療補助目的
医療補助目的で行われるニップルアートメイクは、以下のような乳房手術を受けた方が対象となります。
- 乳房切除術
- 乳房部分切除術
- 乳房再建術
- 乳頭再建術
- 乳輪再建術
- 陥没乳頭形成術
- 乳輪縮小術
ニップルアートメイクは手術による色むらのカモフラージュや乳輪の再建に適しており、バストトップの再建手術で生じやすい色やサイズの左右差も整えることができます。
また美容目的の乳輪縮小術でできた傷跡もカモフラージュすることができ、あらゆる乳房手術後の悩みを解決することが可能です。
色味やサイズが気になる人|美容目的
美容目的のニップルアートメイクは以下のような方に適しています。
- バストトップの黒ずみを短期間で改善したい方
- 乳輪のサイズが小さいのが気になる方
従来の医療で乳輪の黒ずみを改善させるには、美白剤の外用や弱いレーザーを使って長期間治療を続ける必要がありました。
ニップルアートメイクであれば1〜3回程度の施術で色を変化させられ、短期間での黒ずみ改善が可能です。
アートメイクはグラデーションを作るのも得意で、自然に乳輪を拡張できます。
これまでは難しかった「乳輪サイズを大きくしたい」という希望を叶えられるのも、ニップルアートメイクの魅力と言えるでしょう。
ニップルアートメイクで解決できる悩み
- 乳輪の傷跡を隠したい
- 失ったバストトップを再建したい
- 乳輪・乳頭の左右差を整えたい
- 乳輪を大きくしたい
- 乳輪の黒ずみを解消したい
ここからは、ニップルアートメイクで解決出来る4つの悩みについて詳しく紹介していきます。
乳輪の傷跡を隠したい
乳房の手術を受けると、乳輪にキズが入り白抜けしたり皮膚がひきつれたりすることがあります。
ニップルアートメイクでは周辺の乳輪の色に合わせてインクを調合し、白く抜けている部分に着色することで、傷や色むらを目立たなくすることが可能です。
傷がなかった頃の綺麗なバストトップを再現することで、温泉やサウナでも周りの目を気にせずに楽しめるようになり、QOL(生活の質)の向上につながります。
失ったバストトップを再建したい
乳がんが進行すると乳房の全摘出が必要なケースがあります。
バストの膨らみからトップまで全てを切除するため精神的なショックが大きく、摘出後に膨らみを再建する手術を受ける方も多いです。
それに比べ乳輪や乳頭の再建手術を受ける方は少なく、身体的負担が大きいことが理由の一つに挙げられます。
ニップルアートメイクであれば身体へのダメージを最小限に抑えながら乳輪を再建できるため、新たな乳輪・乳頭再建術として推奨する医師も増えています。
ただし、乳頭を立体感が出るように描くことはできても立体的にすることはできません。
乳頭の膨らみを再現したい場合は、手術での再建を検討しましょう。
乳輪・乳頭の左右差を整えたい
移植や局所皮弁(周辺皮膚を立ち上げる技術)でバストトップを再建しても、以下の理由で色や形に左右差が生じることがあります。
- 乳輪からの移植
- 他部位からの移植や局所皮弁
⇨切除範囲に限りがあり大きさを合わせるほど皮膚にゆとりがない
⇨肌の色が薄く乳房の皮膚になじんでしまう
ニップルアートメイクでは健康な乳輪・乳頭に色やサイズを合わせて着色することが出来るため、左右差のない美しいバストトップに仕上がります。
乳輪を大きくしたい
乳輪が大きいことに悩む方がいる一方で、小さいことで悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
特に豊胸手術後はバストサイズとバストトップのバランスが大きく変わるため、乳輪を大きくしたいと考える方が多くいます。
男性の場合も海やプールなどで上裸になる機会が多く、小さい乳輪をコンプレックスに思うことも少なくありません。
ニップルアートメイクは元の色に合わせて自然に乳輪拡張が出来るため、カラーチェンジをせずにサイズのみ変化させることも可能です。
乳輪の黒ずみを解消したい
妊娠中から産後にかけて、乳輪の黒ずみが気になり始めた方も多いはず。
乳輪の黒ずみは主にホルモンバランスや摩擦の影響で、メラニン色素が沈着することで起こるとされています。
これまで乳輪の黒ずみを解消するには、レーザートーニングやハイドロキノンの外用など、メラニンを分解する治療を長期的に行う必要がありました。
ニップルアートメイクであればピンクやオレンジの色素を上から重ねることで、短期間で明るい印象に変化させることができます。
しかし乳輪の場合はベースとなる皮膚の色が暗いため、トーンアップには限界があります。
どの程度色の変化が見込めるかは、施術の担当者に確認すると良いでしょう。
ニップルアートメイクで解決できない悩み
- 乳輪を小さくしたい
- 色素沈着を改善させたい
ニップルアートメイクは色を“プラス”することが得意な反面、“マイナス”することはできません。
乳輪を小さくしたい
ニップルアートメイクは色を足す施術であるため、乳輪を大きくすることはできても、小さくすることはできません。
そのため乳輪を小さくしたい場合は、乳輪縮小術で乳輪を切除する必要があります。
この手術により傷が目立ってしまった場合、ニップルアートメイクでカモフラージュすることも可能です。
色素沈着を改善させたい
ニップルアートメイクは短期間で乳輪のカラーチェンジができますが、色素沈着の原因であるメラニンを分解することはできません。
根本治療を望むのであれば、美容皮膚科領域でレーザー治療や美白剤を使用して、地道にメラニンを分解する必要があります。
ニップルアートメイクの注意点
デリケートな悩みを解消してくれるニップルアートメイクですが、施術を受ける際に注意するポイントが4つあります。
- 施術者により技術力が異なる
- 痛みやダウンタイムがある
- 再建手術は先に行う
- 定期的なメンテナンスが必要
ここからは各項目について、詳しく説明していきます。
施術者により技術力が異なる
ニップルアートメイクは美容目的から医療補助目的まで対象者が広いため、施術者によっては美容目的の方にしか対応できないケースがあります。
カラーチェンジと乳輪再建では必要な技術が異なるため、施術者を選ぶ際はご自身が解消したい悩みに適した技術を持っているかを確認することが大切です。
痛みやダウンタイムがある
医療機関で施術を行う際は麻酔を使用するため痛みを最小限にすることはできますが、全く無痛であるとは言えません。
痛みの感じ方には個人差があり、寝てしまう程度の方から悶絶するほど痛いと言う方まで様々です。
ダウンタイムは約1週間。その間痒みや腫れが伴うこともあります。
乳輪や乳頭の再建手術と比較すると痛みやダウンタイムは少ないですが、身体への負担がないというわけではないことを理解しておきましょう。
再建手術は先に行う
ニップルアートメイク後に乳房やバストトップの再建手術をすると、立体的になることにより大幅にデザインを損ねてしまう可能性があります。
そうなった場合色素を除去することはできますが、金銭的にも身体的にも負担がかかります。
乳房や乳輪・乳頭の再建手術を検討されている方は、手術を全て終えた後にニップルアートメイクを行うようにしましょう。
定期的なメンテナンスが必要
ニップルアートメイクは永久的なものではなく、1〜3年ほどかけて少しずつ色が薄くなるため、1年に1回を目安にリタッチをするのがおすすめです。
薄くなるのはデメリットと思われる方もいるかもしれませんが、退色することで左右の色味を合わせやすくなります。
健康な側の乳輪は年々色が変わるため、左右差の少ない綺麗なバストトップを維持するには、プラスに働く要素とも言えるでしょう。
ニップルアートメイクの施術の流れ
ニップルアートメイクの施術は以下の6ステップで行われます。
- カウンセリング
- 診察
- デザイン
- 麻酔
- 施術
- アフターケア
施術の流れは他部位のアートメイクと大きな違いはありませんが、着色する範囲が広いため、施術時間は3時間前後と長めです。
またバストトップは眉などと異なり、衣服での擦れは避けられません。術後にガーゼなどで保護することもありますが、浸出液がランジェリーに付着する可能性があるため、汚れても良い服装で向かうと安心です。
ニップルアートメイクの価格相場
ニップルアートメイクの価格相場は以下の通りです。
- 片側乳輪・乳頭
- 7万円前後
- 両側乳輪・乳頭
- 15万円前後
施設によっては別途見積もりとしているところもあり、求めているデザインや目的により価格は変動します。
一般的には美容目的のカラーチェンジより、傷跡修正や乳輪の3Dアートなど特殊な技術が必要な場合の方が高額になる傾向です。
乳がん患者に対して施術を行う特性上、片側料金を設定しているクリニックも多くあります。「片側料金を両側分と思っていたら想定より高額になってしまった」というケースもあるため、施術範囲の記載がない場合は事前に確認が必要です。
まとめ
ここまでの内容を振り返り、ニップルアートメイクについて大切なポイントを以下にまとめました。
- ニップルアートメイクは乳がん手術で乳輪を失った方に向けて医療補助として行われてきた施術
- 近年では乳輪の黒ずみ解消や乳輪拡張などの美容目的で施術を受ける方も増えている
- 乳輪の色素沈着を根本的に改善したりやサイズを小さくすることはできない
- 施術の価格相場は「片側7万円前後」「両側15万円前後」
ニップルアートメイクは医療補助の役割だけでなく、乳輪の黒ずみを解消し美しいバストにするなどの美容面でのニーズにも対応できる治療です。
バストトップは衣服を着ていると見えない位置ではありますが、密かにコンプレックスを抱いている方も少なくありません。
この機会に乳輪の黒ずみや傷跡などのデリケートなお悩みを、ニップルアートメイクで解消してみてはいかがでしょうか。
よくある質問
保険適応はされますか?
ニップルアートメイクは原則保険適用外です。
アートメイク以外の乳輪・乳頭再建術(移植・局所皮弁)は健康保険の適用対象ですが、身体への負担が大きいのが難点です。
それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、適した施術を選択するのが良いでしょう。
施術は何回で完了しますか?
アートメイクの特性上、2〜3回ほど施術を繰り返すことで定着させることが多いです。
カラーチェンジであれば1度の施術で完了するケースもありますが、乳輪の再建や拡張などの色がない部分に行う施術は回数がかかると考えた方が良いでしょう。
また肌の代謝とともに退色するため、1〜2年に1度メンテナンスをすることが推奨されています。
施術後MRIは受けられますか?
ほとんどの場合問題なくMRI検査を受けることが可能です。
ただし使用しているインクの種類によっては、火傷を起こしたり診断画像を乱したりする恐れがあります。
念の為検査を受ける際にはアートメイクを入れていることを申告しましょう。