粃糠性脱毛症とは|大量の乾性フケやかゆみを伴う薄毛の症状

粃糠(ひこう)性脱毛症とは、カサカサしたフケや頭皮の炎症などがみられる薄毛の症状のことです。
よほど大量のフケが発生しない限り髪は抜けませんが、悪化するとかゆみや痛みが強くなり、日常生活に支障をきたす場合もあります。
このページでは粃糠性脱毛症の症状や原因、治し方、予防方法などを詳しく解説していきます。
目次
粃糠性脱毛症とは
粃糠(ひこう)性脱毛症とは、乾燥した大量のフケを伴う脱毛症のことです。
フケやそれに伴う炎症の影響を受けた毛根は、びまん性脱毛症のようにまばらに抜け落ちます。
黄色っぽい脂性のフケではなく白っぽい乾性のフケが、毛穴に詰まるほど大量に発生するのが特徴です。
加齢とともに進行するFAGA(女性男性型脱毛症)とは異なり、頭皮のトラブルが解消されれば次第に髪が生えてきます。
粃糠性脱毛症の症状
粃糠性脱毛症の具体的な症状は次の通りです。
- 乾燥した細かいフケが大量に出る
- 頭部全体の髪が徐々に抜ける
- 髪が細くなる
- 頭皮が乾燥する
- 頭部に強いかゆみを感じる
- 頭皮に赤みやかさぶたができる
粃糠性脱毛症は粉雪のような細かいフケが出るのが特徴です。
米や麦を精製する際に出る「粃」(中身のないもみ)や「糠」(ぬか)がフケと似ていることから「粃糠性脱毛症」という名前になったと考えられています。
粃糠性脱毛症のメカニズム
粃糠性脱毛症の仕組みについて確認していきましょう。
- 大量のフケが蓄積して毛穴をふさぐ
- 毛穴にいる常在菌が繁殖する
- 毛穴が炎症を起こす
- 髪の成長が阻害されてヘアサイクルが乱れる
- 抜け毛が増える
頭皮にはマラセチアというカビの一種が常在していて、通常は無害ですが増えすぎることで毛根に炎症を引き起こします。
炎症が発生すると髪をつくる細胞の機能が低下してしまうので、髪が抜けやすくなってしまいます。
毛根の形で見分けられる?
毛根は髪の健康状態によってさまざまな形に変化します。
粃糠性脱毛症はフケが髪の発育を阻害している状態なので、毛根部の先端が痩せ細って伸びている場合が多いです。
正常なヘアサイクルで抜けた髪は、毛根の先端がマッチ棒のように丸く膨らんでいます。
粉雪のような乾燥したフケが増えて毛根が細長くなってきたら、粃糠性脱毛症の可能性が高いです。
フケを伴う他の脱毛症について
脂漏(しろう)性脱毛症は粃糠性脱毛症と同じように、フケが大量に発生することで髪が抜けてしまう症状です。
皮脂の過剰分泌による脂っぽいベタベタしたフケと、それに関連する頭皮の炎症が毛根にダメージを及ぼします。
粃糠性脱毛症と脂漏性脱毛症の違い
粃糠性脱毛症と脂漏性脱毛症は症状が似ているため混同されやすいですが、次のような違いがあります。
粃糠性脱毛症 | 脂漏性脱毛症 | |
---|---|---|
症状 | 頭皮の乾燥、フケ、 抜け毛 |
頭皮のベタつき、 フケ、抜け毛 |
特徴 | カサカサしたフケ | ベタベタしたフケ |
発症の要因 | フケによる頭皮環境の悪化 | 皮脂の過剰分泌 |
より具体的な症状や原因については脂漏性脱毛症とは|ベタつくフケや湿疹を伴う抜け毛についてで解説しているのでぜひご確認ください。
セルフチェックはあくまでも目安として行い、後日皮膚科を受診して適切な診察や治療を受けるようにしましょう。
粃糠性脱毛症の原因
粃糠性脱毛症の原因は毛穴をふさぐほどの大量のフケと、それに伴う頭皮の炎症です。
具体的には、シャンプーによるダメージや特定の物質に対するアレルギー反応などが考えられます。
自分に合った適切な治療方法や対策を見つけるために、まずは薄毛を引き起こす原因について理解しておきましょう。
洗浄力の強いシャンプー
洗浄力の強いシャンプーを日常的に使用していると、粃糠性脱毛症になることがあります。
激落ちシャンプーなどと謳われている製品は、頭皮の汚れをきれいに落とす効果がある一方で、必要な皮脂まで取り除いてしまうからです。
頭皮に適量の皮脂がないと、乾燥して角質層が剥がれやすくなるので、フケが発生してしまいます。
アレルギー反応
毛穴の常在菌であるマラセチアやシャンプー剤などに対するアレルギー反応も、粃糠性脱毛症の要因の1つです。
シャンプー剤には製品によって、界面活性剤や防腐剤、香料、人工着色料など、アレルギー反応を引き起こす可能性のある添加物が含まれています。
これらの成分により炎症が引き起こされると、頭皮や毛根にダメージが加わって髪が抜けてしまうのです。
粃糠性脱毛症の治し方
粃糠性脱毛症の治療には、ステロイド外用薬や抗真菌薬が使用されます。
これらの薬は頭皮の炎症やその原因菌にアプローチして、ターンオーバーを正常化させる働きがあります。
なお毛穴の常在菌であるマラセチア関連の疾患は、薬で完治した後も頭皮環境を改善しなければ再発する可能性があるので注意が必要です。
ステロイド外用薬や抗真菌薬
粃糠性脱毛症の治療には、炎症を抑えるステロイド外用薬や、マラセチア菌の増殖を抑える抗真菌薬などが使用されます。
かゆみが強い場合には、抗ヒスタミン薬が処方されることもあります。
特にステロイド外用薬は長期間使うと副作用が出る可能性があるため、医師の指示を守って正しく使用することが重要です。
ステロイド 外用薬 |
抗真菌薬 (外用薬) |
抗ヒスタミン薬 | |
---|---|---|---|
効果 | 炎症を抑える かゆみ、赤み、腫れを軽減する |
マラセチアの増殖を抑える | かゆみを抑える |
長期使用 | 副作用の可能性 | 可能 | 可能 |
用法 | 塗り薬 | 塗り薬 | 飲み薬 |
再発のリスク | あり | 比較的低い | 併用薬による |
粃糠性脱毛症の予防方法
粃糠性脱毛症を予防するには、次のような方法で頭皮の環境を整えることが大切です。
- アミノ酸系のシャンプー剤を使う
- 洗髪の頻度を見直す
- 食生活の改善
- ストレスをためない
それでは1つずつ詳しく確認していきましょう。
アミノ酸系のシャンプー剤を使う
粃糠性脱毛症の予防には、低刺激で保湿力のあるアミノ酸系シャンプー剤の使用がおすすめです。
市販品の中ではやや高めの価格ですが、頭皮に優しいのでフケや乾燥が気になる方にも適しています。
またケトコナゾールなどが配合された、抗真菌効果があるシャンプー剤を適宜使用するのも効果的です。
洗髪の頻度を見直す
シャンプー剤の成分とあせて、シャンプーの頻度も見直してみましょう。
頭皮の健康を維持するために、1日に複数回シャンプーをする方もいますが、洗髪は基本的に1日1回で十分です。
髪を洗いすぎると必要な皮脂まで取り除かれるので、乾燥を引き起こしてしまいます。
シャンプーする際は頭皮にダメージを与えないよう、爪を立てずに優しく洗うことも大切です。
食生活の改善
頭皮の健康を維持する食材をバランスよく取り入れることで、粃糠性脱毛症を予防できます。
ビタミンB群:レバー、鶏肉、バナナ、卵黄など
ビタミンA:にんじん、ほうれん草、小松菜、レバーなど
ビタミンE:アボカド、ナッツ類、サバ、オリーブオイルなど
たんぱく質:肉類、魚介類、大豆製品、乳製品など
ビタミンB群には髪の健康を保ち頭皮環境を改善する働き、ビタミンAには皮膚の乾燥や炎症を防く働きがあります。
血行を促進するビタミンEや、お肌のターンオーバーに必要なたんぱく質とあわせて、積極的に取り入れてみましょう。
食事だけで十分な栄養を摂取するのが難しい場合は、薄毛に効くサプリメントを活用するのもおすすめです。
ストレスをためない
粃糠性脱毛症を予防するには、ストレスをためないことも重要です。
ストレスは免疫機能の低下や血行不良、ホルモンバランスの乱れなどを引き起こし、頭皮や髪に悪影響を及ぼします。
精神的な負担を軽減するには、軽い運動や十分な睡眠を習慣化することが大切です。
しっかり眠ると髪の成長を促進する成長ホルモンが分泌されるので、髪や頭皮の健康をより効果的にサポートできます。
粃糠性脱毛症の注意点
頭皮トラブルが気になる方に向けて、粃糠性脱毛症を悪化させないための注意点をご紹介します。
- 髪を濡れたまま放置しない
- 発毛剤・育毛剤は副作用のリスクがあるので使用しない
- ワックスやスプレーはなるべく避ける
- 紫外線対策や保湿ケアを徹底する
- 自己判断で市販薬を多用しない
頭皮環境や生活習慣は粃糠性脱毛症の進行に大きな影響を与えます。
適切な治療とあわせてヘアケアなども見直すことで、少しずつ症状を改善させていきましょう。
まとめ
粃糠性脱毛症についてここまでの内容をまとめると、次のポイントが大切です。
- 粃糠性脱毛症は乾燥した大量のフケやかゆみ、炎症などを伴う脱毛症
- シャンプーでの洗いすぎやアレルギー反応などで発症する
- ステロイド外用薬や抗真菌薬で治療できる
- アミノ酸系のシャンプー剤がおすすめ
- 食生活の改善やストレスをためないことも大切
粃糠性脱毛症は、早期に適切な治療を始めることで治すことができます。
美しい髪を維持するために、フケが目立ち始めたら早めに皮膚科を受診するようにしましょう。
よくある質問
どの程度のフケが出たら粃糠性脱毛症ですか?
フケの発生は誰にでも起こる生理現象ですが、頭皮を覆うほどに達したら粃糠性脱毛症と考えられます。
多少のフケが出たからといって、すぐに粃糠性脱毛症になることはないので、あまり心配しすぎないようにしましょう。
粃糠性脱毛症になりやすいのはどんな人ですか?
乾燥肌の方やアレルギー体質の方、アトピー性皮膚炎の方は粃糠性脱毛症になりやすいです。
頭皮が乾燥しやすい冬場は特に注意して保湿ケアを行いましょう。
粃糠性脱毛症の治療期間はどれくらいですか?
体質や生活習慣によって異なりますが、髪は通常1カ月で約1cm、1年で12〜15cmくらい伸びます。
そのため頭皮トラブルが解消されてから、半年くらいたてば目立たなくなる場合が多いです。
粃糠性脱毛症は自然治癒しますか?
症状が軽度であれば自然治癒する可能性がありますが、多くの場合は治療が必要です。
フケがいつもより増えたなと感じたら、放置しないでなるべく早く皮膚科を受診しましょう。