脂漏性脱毛症とは|ベタつくフケや湿疹を伴う抜け毛について

ベタベタしたフケや湿疹などを伴う薄毛の症状を脂漏(しろう)性脱毛症といいます。
脂っぽい食事やシャンプーの洗い残しなどによって、頭皮環境が悪化した場合に引き起こされる症状です。
このページでは、脂漏性脱毛症の初期症状や原因、治し方、予防方法などについて詳しく解説していきます。
目次
脂漏性脱毛症とは|特徴と仕組みについて
脂漏(しろう)性脱毛症とは、湿疹やフケなどを引き起こす脂漏性皮膚炎が悪化した場合に生じる脱毛症のことです。
皮脂の過剰分泌により頭皮環境が悪化すると、その影響を受けた毛根部分の髪が抜けてしまいます。
脂漏性脱毛症の仕組み
- 何らかの影響で皮脂が過剰に分泌される
- 皮脂がフケとなり頭皮の毛穴をふさぐ
- 雑菌などが繁殖して脂漏性皮膚炎になる
- 毛根にダメージが加わり髪が抜ける
脂漏性皮膚炎はどんな病気?
脂漏性皮膚炎とは、皮脂の分泌が活発な脂漏部位で慢性的な湿疹ができる疾患のことです。
生後2週間頃から発症する乳児型と思春期以降の成人型があり、どちらも頭皮・生え際・眉毛・鼻周り・胸・脇の下などに症状が現れます。
乳児型は生後約1年で自然に治りますが、成人型は治りにくく再発しやすいのが特徴です。
脂漏性皮膚炎は尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)やアトピー性皮膚炎など、他の疾患とも見た目が似ているため、自己判断だけでケアしないようにしましょう。
脂漏性脱毛症の初期症状
脂漏性脱毛症は髪が抜けてしまう前に次のような症状が現れます。
脂漏性脱毛症の予兆となる症状
- 大量のフケが出る
- 頭皮がベタつく
- 頭皮に湿疹、ニキビができる
- 頭皮にかゆみ、痛みを感じる
これらの症状は、髪や頭皮からのSOSです。
フケや頭皮の炎症が気になったら、悪化する前に適切な治療を受けるようにしましょう。
フケタイプの違い
フケは古くなった頭皮の角質が剥がれ落ちたものです。
頭皮にべったりと付着する脂性のフケと、白くて粉っぽい乾性のフケの2種類に分けられます。
脂漏性脱毛症は、ベタベタした脂性のフケが大量に現れるのが特徴です。
反対にカサカサした乾性のフケが目立つようであれば、粃糠(ひこう)性脱毛症の可能性があります。
脂漏性脱毛症と粃糠性脱毛症の違い
脂漏性脱毛症と粃糠性脱毛症はよく似ている症状ですが、次のような違いがあります。
脂漏性脱毛症 | 粃糠性脱毛症 | |
---|---|---|
症状 | 頭皮のベタつき、 フケ、抜け毛 |
頭皮の乾燥、 フケ、抜け毛 |
特徴 | 脂性のフケ | 乾性のフケ |
要因 | 皮脂の過剰分泌 | フケによる頭皮環境の悪化 |
粃糠性脱毛症の症状や原因については粃糠性脱毛症とは|大量の乾性フケやかゆみを伴う薄毛の症状で詳しく解説しているのでぜひご確認ください。
脂漏性脱毛症の原因
脂漏性脱毛症の原因は明確に解明されていませんが、皮脂の過剰分泌や常在菌であるマラセチアの増殖が関係しているとされています。
マラセチアは皮脂を栄養源として繁殖するため、皮脂が多く分泌されると増殖が進みやすくなります。
脂漏性脱毛症を防ぐためにも、ここでは皮脂が過剰に分泌される原因について詳しく解説していきます。
皮脂が過剰に分泌される原因
- 脂っぽい食事
- 睡眠不足
- シャンプーの洗い残し
- ホルモンバランスの乱れ
- ヘアスプレーやヘアワックス
それでは1つずつ確認していきましょう。
脂っぽい食事
脂っぽいものをたくさん食べると、皮脂が多く分泌されるので脂漏性脱毛症のリスクが高まります。
脂質は体内で分解するときに、皮脂の過剰分泌を抑えるビタミンB群をたくさん消費してしまうので、代謝の面でもとりすぎはNGです。
特にファストフードや揚げ物、スナック菓子などが好きな方は食べ過ぎに注意しましょう。
要注意な食べ物
- ラーメン
- 唐揚げ
- 天ぷら
- ハンバーガー
- カップ麺
- ポテトチップス
- チョコレート など
睡眠不足
睡眠不足も皮脂が過剰に分泌される原因の1つです。
十分な睡眠が取れないと成長ホルモンの分泌量が減少するので、お肌の代謝サイクルであるターンオーバーが乱れます。
これにより古い角質が剥がれにくくなり、たまったフケが炎症を引き起こしてしまうのです。
睡眠は頭皮の健康だけでなく髪の成長とも深く関わっています。
そのため美しい髪を維持するには、快適な寝具をそろえたり適度な運動を取り入れたりして睡眠の質を高めることが大切です。
シャンプーの洗い残し
シャンプーの洗い残しがあると、頭皮に余分な皮脂や汚れが蓄積されます。
これにより頭皮環境が悪化すると、脂漏性脱毛症などの頭皮トラブルにつながる可能性があります。
特におでこ周辺の生え際は洗い残しが多いので、しっかり洗い流すようにしましょう。
また頻繁に洗いすぎても頭皮に負担がかかってしまうので、シャンプーは1日1回、優しい力できちんと洗い流すことが大切です。
ホルモンバランスの乱れ
ストレスなどでホルモンバランスが乱れると、皮脂の分泌を促すプロゲステロン(女性ホルモン)の働きが強まって、皮脂が過剰に分泌されることがあります。
ホルモンバランスは生理前などに乱れがちですが、実は生活習慣とも深く関わっています。
そのためバランスの取れた食事や十分な睡眠などを心がけることが大切です。
ヘアスプレーやヘアワックス
髪のスタイリングに欠かせないヘアスプレーやワックスですが、頭皮に付着したまま放置していると皮脂の過剰分泌を引き起こす可能性があります。
スタイリング剤を使用する際は頭皮にかからないように塗布し、その日のうちに洗い流すことが大切です。
ヘアスプレーの場合は、頭皮から10〜20cm程度離して使用してください。
その他発毛剤や育毛剤なども頭皮に刺激を与える可能性があるので、フケや炎症が気になる方はなるべく使わないようにしましょう。
脂漏性脱毛症の治し方
脂漏性脱毛症や脂漏性皮膚炎は自然治癒することが少ないので、皮膚科を受診して治療する必要があります。
症状の程度や体質によって適切な治療薬は異なりますが、抗真菌薬やステロイド外用薬が処方されるケースが多いです。
ここでは抗真菌薬やステロイド外用薬の効果や注意点について、解説していきます。
抗真菌薬やステロイド外用薬
抗真菌薬(内服・外用薬)は、脂漏性脱毛症の原因と考えられているマラセチアの増殖を防ぐ働きがあります。
炎症の原因に直接アプローチするため、再発しにくいのが特徴です。
対してステロイド外用薬は、頭皮の炎症やそれに伴う湿疹・かゆみなどを抑える効果があります。
強い抗炎症作用が期待できますが、中止後に再発しやすいのが難点です。
長期間使用すると副作用で、塗布した部分に赤みやニキビが発生する可能性もあります。
他にも症状に応じて、強いかゆみを抑える抗ヒスタミン薬や、皮脂の分泌を抑えるビタミンB2・ビタミンB6(内服薬)などが使用されます。
ミノキシジルは効果がある?
ミノキシジルは医学的に発毛効果が認められている薬で、女性の代表的な薄毛の症状であるFAGA(女性男性型脱毛症)の治療に有効です。
しかしFAGAとは異なる仕組みの脂漏性脱毛症に対しては、効果が認められていません。
脂漏性脱毛症は頭皮のフケや炎症が脱毛を引き起こすため、まずは頭皮トラブルを取り除くことが大切です。
脂漏性脱毛症の予防方法
脂漏性脱毛症は生活習慣と深く関わっているので、日常的な行動を見直すことで予防できます。
すでに発症している方は、改善策として取り入れるのも効果的です。
脂漏性脱毛症の予防方法
- 食生活を改善する
- シャンプー剤を見直す
- ストレス管理をする
湿度の高い梅雨や夏は皮脂の分泌量が増加しやすいので、特に注意して対策していきましょう。
食生活を改善する
脂っぽい食事の頻度を減らし、皮脂の過剰分泌を抑えるビタミンB2やビタミンB6を積極的に取り入れることで、脂漏性脱毛症を予防できます。
食事だけで十分な栄養を摂取するのが難しい方は、薄毛に効くサプリメントを活用するのもおすすめです。
ビタミンB2:
豚レバー、ブロッコリー、納豆、牛乳、卵など
ビタミンB6:
カツオ、マグロ、バナナ、赤パプリカ、など
脂質は「体に悪い」というイメージを持たれがちですが、体の健康を維持する上で重要な役割も担っています。
そのため極端に摂取量を減らすのではなく、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどとあわせてバランスよく取り入れることが大切です。
シャンプー剤を見直す
シャンプー剤には、大きく分けて高級アルコール系、せっけん系、アミノ酸系の3タイプがあります。
頭皮トラブルがある方は、お肌や髪に優しいアミノ酸系のシャンプー剤がおすすめです。
アミノ酸系は他のタイプに比べてやや洗浄力が弱いものの、低刺激で保湿力にも優れています。
高級アルコール系 | せっけん系 | アミノ酸系 | |
---|---|---|---|
洗浄力 | とても強い | 強い | やや弱い |
刺激性 | とても強い | 低刺激 | 低刺激 |
洗い上がり | 爽快感 | 髪がきしむ | しっとり |
価格 | 安い | 安い | やや高い |
表記例 | ラウリル硫酸Na、 ラウレス硫酸Na |
石鹸素地、 ラウリン酸 |
ココイルグルタミン酸Na、 ラウロイルメチルアラニンNa |
また抗真菌薬であるケトコナゾールやミコナゾール配合のシャンプー剤も効果的です。
これらの成分は脂漏性脱毛症を引き起こすマラセチアを抑制する働きがあります。
ミコナゾール製品は市販で購入できますが、ケトコナゾールは医薬品なので医師の処方を受けてから使用するようにしましょう。
ストレス管理をする
天気や騒音、友人関係、育児、仕事など、さまざまな理由で多くの方がストレスを感じています。
ストレスにより自律神経やホルモンバランスが乱れると、あらゆる不調を引き起こすので、しっかりと向き合って改善していくことが大切です。
手軽にできるストレス解消法
- 趣味の時間を確保する
- 温かいお風呂にゆっくりつかる
- 室温や寝具などを調整して睡眠環境を整える
- ウォーキングなどの軽い運動を続ける
軽い運動は1日20分以上を目安に、体が温まって少し汗をかくくらいまで行うのが効果的です。
なおストレス解消のための暴飲暴食や寝だめは、かえって体に悪影響を及ぼす可能性があるので、絶対にしないようにしましょう。
まとめ
脂漏性脱毛症についてここまでの内容を振り返ると、次のポイントが大切です。
- 脂漏性脱毛症はベタベタしたフケや湿疹を伴う薄毛の症状
- マラセチアというカビの一種や皮脂の過剰分泌が関係している
- 抗真菌薬やステロイド外用薬で治療できる
- 食生活や睡眠時間などの見直しも大切
- アミノ酸系のシャンプー剤がおすすめ
ちょっとした頭皮トラブルが生じたからといって、放置して重症化しない限り脂漏性脱毛症になることはありません。
そのため初期段階で適切な治療や対策を行えば、髪が抜ける前に治すことができます。
皮膚科の受診や生活習慣の見直しなど、できることから少しずつ取り入れて、頭皮環境を改善していきましょう。
よくある質問
脂漏性脱毛症に効く市販の代替薬はありますか?
脂漏性脱毛症の治療に効果的な薬は市販されていないので、皮膚科で医師の処方を受ける必要があります。
しかし抗真菌作用のあるシャンプーなど、症状の緩和や対策に役立つケア製品はドラックストアなどで購入できます。
脂漏性脱毛症を発症しやすいのはどんな人ですか?
オイリー肌の方や外食が多い方、スタイリング剤を毎日使う方などは発症しやすいと考えられます。
食生活やヘアケアを見直して頭皮への負担を軽減していきましょう。
脂漏性脱毛症とFAGAの違いはなんですか?
FAGAは加齢や遺伝、ストレスなどで発症する薄毛の症状です。
脂漏性脱毛症は主に皮脂の過剰分泌によって引き起こされますが、FAGAは悪玉男性ホルモンの働きによって生じると考えられています。
FAGAの症状や原因についてはFAGAとは|まばらに抜ける女性の薄毛症状で詳しく解説しているのでぜひご確認ください。